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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)6425号 判決

一 原告らが本件実用新案権を共有(持分各二分の一)していること、本件考案の登録出願の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が原告ら主張のとおりであることは当事者間に争いがない。

二 右争いのない実用新案登録請求の範囲の記載に成立に争いのない甲第二号証(実用新案公報(甲))を総合すれば、本件考案は、主としてメロンの育成用として幼果の下敷として使用するメロン用シートに関する考案であつて、その構成要件は、次のとおりであることが認められる。

1 発泡樹脂板を素材とするシートに、内面中空であつてかつその表面に節を備えた突隆部が放射状に配設されていること、

2 前記シートの適宜個所に通孔が穿設されていること、

3 メロン用シートであること。

三 そこで、右構成要件1の「節」がいかなるものであるかについて考察する。

1 前顕甲第二号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の欄には、「また該突隆部1には軸直交方向に円弧状に突出する節7を数個設けた結果、従来のシートの如くメロンの外周を面接触ではなく点接触状に支承するものであるから、このためメロンの外周全面に亘つて通気配光されてその発育成長が極めて良好であり、また支承面によつて幼果の自然な成長を阻害したりその外皮を損傷する虞れがない。しかもこの節7は突隆部1のリブとして有効に働き、幼果の成長と共に重量が大きくなつても充分支承できるのである。」(実用新案公報(甲)二欄三七行ないし三欄八行。ただし、「従来ノシート」とあるは、「従来のシート」の誤記と認める。)と記載されていることが認められ、右記載に、同号証によれば本件明細書の添附図面(第一、第二回)には、本件考案の実施例として、突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に、断面の全周にわたつて突出している構造の節を有するシートが示されていることが認められることを参酌すれば、本件考案の右構成要件1にいう「節」とは、突隆部から更にその「軸直交方向に円弧状に突出」したものであつて、シートの上に置かれた「メロンの外周を面接触ではなく点接触状に支承」し、かつ、「リブとして有効に働く」という作用効果を奏するもの、すなわち、「突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に突出して、メロンの外周を点接触状に支承しかつリブとして有効に働くもの」であると解するのが相当である。

そして、「節」を右のように解する以上、右「円弧状に突出」するとは、突隆部の断面の全周にわたつて寸分の跡切もなく突出していることを要するかどうかは別として、少なくとも、メロンの外周と接触する部分には突出していることを要するといわなければならない。けだし、本件考案において「節」は、メロンの外周を点接触状に支承するものであるところ、メロンの外周と接触する部分に突出していない限り、メロンの外周を支承するのは、突隆部そのものであつて、「節」がメロンの外周を点接触状に支承することはありえないからである。

2 原告らは、考案の詳細な説明の欄の記載中の右引用部分(実用新案公報(甲)二欄三七行ないし三欄八行)は、あくまで一実施例についての記述にすぎないと主張し、本件考案における右「節」は前記のようには解しえない旨強調する。

しかしながら、右引用部分が一実施例についての記述ではなく、本件考案の本質的な構成及び作用効果についての記述であることは、右引用部分は、「以下第1図及び第2図に示した1実施例に基いて本考案に係るメロン用シートを詳述すると、」に始まる、実施例に基づく本件考案の詳述部分(二欄五ないし三〇行)が終わつた後に、「本考案は以上のように、……」(二欄三一行)を書出しとして、本件考案の作用効果がまとめて述べられている部分中の記述であること、また、右引用部分は、考案の詳細な説明の欄の記載のうち、冒頭の本件考案の解決すべき課題についての記載中の、従来のメロン用シートにおいては、「突隆部にはメロン外皮の外周を支承する支承面を形成し該支承面を介して面接触によつてメロンを支承するため、メロンの該支承面に接触した部分の採光通風が悪くその発育が阻害され、更には該支承面によつて幼果の外皮が不整となり自然な成長が阻害され、或いはその外皮が損傷する等の問題がある。」(一欄二八ないし三五行)という記述に対応して、突隆部に該突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に突出する節を数個設ける構成をとるという、当該課題の解決手段、及び右構成をとることにより、メロンの外周を面接触ではなく点接触状に支承し、そのため、メロンの発育成長に好影響を与えることになる等の作用効果を示したものであることから、明らかである。したがつて、原告らの右主張は、採りえない。

3 また、原告らは、「点接触状に支承する」という結果は、「節」のみのもたらす作用効果ではないと主張する。

しかしながら、右引用部分の「該突隆部1には……節7を数個設けた結果、……点接触状に支承する」との文言自体からしても、また、考案の詳細な説明の欄の記載中の、本件考案の作用効果がまとめて述べられている部分(実用新案公報(甲)二欄三一行ないし四欄四行)の右引用部分以外の部分は、「突隆部1の下面に地面と接しない空間9を形成」するという構成をとつたこと(二欄三一ないし三七行)、「シート……の中心部等に通孔8、8´を設け」るという構成をとつたこと(三欄八行ないし四欄一行)、「素材として発泡樹脂のシートを用い」るという構成をとつたこと(四欄一ないし四行)から生ずるそれぞれの作用効果が述べられた部分であつて、これらの構成は、いずれも「点接触状に支承する」という作用効果とは全く関係がないことからしても、「点接触状に支承する」という結果は、「節」のみのもたらす作用効果であると認められるから、原告らの右主張は失当といわなければならない。

しかも、この「点接触状に支承する」ことこそ「節」の有する本質的な作用効果であり、「リブとして有効に働く」ことはその附随的な作用効果にすぎないことは、「節」が「点接触状に支承する」という作用効果及びそのことから生ずる作用効果の記述に続いて、「しかも……リブとして有効に働き……」と記載されている、その記載位置及び文言自体からしても、また、考案の詳細な説明の欄の冒頭の本件考案の解決すべき課題についての記載部分中に、「点接触状に支承する」ことに対応する課題についての記述はある(一欄二八ないし三五行)のに対し、「リブとして有効に働く」ことに対応する課題についての記述はないことからしても明らかというべきである。

4 更に、原告らは、「点接触状に支承する」ことについて、突隆部の表面の円弧状の弧が、突隆部の軸直交断面の上表面の一部で突出のないもの又は突出の必ずしも明瞭でないものでも、メロン等との接触部が凹面ではなく平面ないしは凸面でありさえすれば、その接触は点接触状であると主張する。

しかしながら、右原告ら主張のような構造のものでは、メロンを支承するのは「節」ではなく突隆部そのものということになるが、本件考案にいう「点接触状に支承する」とは、突隆部そのものではなく「節」によつて支承する場合の状態を指称するものであることは、前述したとおりであるので、右主張は採用し難い。

5 以上のとおり、本件考案の構成要件1にいう「節」とは、「突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に突出して、メロンの外周を点接触状に支承しかつリブとして有効に働くもの」であり、かつ、右「円弧状に突出」するとは、少なくともメロンの外周と接触する部分には突出していることを要するものといわなければならない。

なお、原告らは、本件考案にいう「節」とは、「果菜類との接触支承が点接触状であり、かつリブ効果を有するものであればすべて含むものであり、したがつて、突隆部の表面の円弧状の弧が、突隆部の軸直交断面の全周を被つて突出せず、突隆部の「上表面の一部」に突出のないもの又は突出の必ずしも明瞭でないものも含むものであるとし、右「上表面の一部」がメロンの外周との接触部分を指称するものとして縷々主張するが、右主張の到底採用の限りでないことは叙上の説明から明らかである。

四 被告がイ号物件を業として製造、販売していること(ただし、別紙(〔編註〕省略)各目録の説明中に「その表面に節を備えた」とある点を除く。)は当事者間に争いがない。

右争いのない別紙各目録の記載(図面を含む。)及びイ号物件であること当事者間に争いのない検甲第一ないし第三号証によれば、イ号物件は、

「添附図面に示すとおりの、発泡性ポリスチレンを素材とするシートに、内面中空であつて、かつ、頂点部分(メロンの外周と接触する部分)を除いてその表面に節を備えた四個の突隆部を放射状に配設し、前記シートの中央部に円形の通孔を穿設してなる果菜類用敷台。」

であることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

右認定によれば、イ号物件の構成は次のとおりであると認められる。

1´ 発泡性ポリスチレンを素材とするシートに、内面中空であつて、かつ、頂点部分(メロンの外周と接触する部分)を除いてその表面に節を備えた四個の突隆部が放射状に配設されていること、

2´ 前記シートの中央部に円形の通孔が穿設されていること、

3´ 果菜類用敷台であること。

五 そこでまず、イ号物件の構成1´と本件考案の構成要件1とを対比検討する。

イ号物件の構成1´は、前記のとおり「発泡性ポリスチレンを素材とするシートに、内面中空であつて、かつ、頂点部分(メロンの外周と接触する部分)を除いてその表面に節を備えた四個の突隆部が放射状に配設されていること」であり、その突隆部は、頂点部分(メロンの外周と接触する部分)を除いてその表面に節を備えていること、換言すれば、頂点部分(メロンの外周と接触する部分)には節が突出していないことが認められる。

しかるに、本件考案の構成要件1にいう「節」とは、「突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に突出して、メロンの外周を点接触状に支承しかつリブとして有効に働くもの」であり、かつ、右「円弧状に突出」するとは、少なくともメロンの外周と接触する部分には突出していることを要するものであること前記のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の構成要件1にいう「節」を備えていないこと、したがつて構成要件1を充足しないことが明らかである。

してみれば、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属さないというべきであるから、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。

六 よつて、原告らの本訴請求をいずれも棄却することとする。

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